ポイントは、今できる仕事と少し背伸びする仕事の組み合わせ、任せ方の設計、伴走のしかた、評価の見える化です。
専門用語はできるだけ避け、だれにでもわかる言葉で説明します。
先に結論:出世させたい部下への任せ方の全体像
①任せる仕事は「今できる仕事+少し背伸びする仕事(ストレッチ課題)」のセットにします。
②上司がやることは「ゴールと権限の明確化」「進捗の短い定期確認」「必要な資源の確保」です。
③土台づくりは「心理的安全性」「公正な評価」「成果の見える化」です。
出世させたい部下に何を任せる?──選び方のフレーム
学びの比率「70・20・10」を意識する
70=実務で学ぶです。
毎日の仕事の中で新しい経験を積めるよう、役割や範囲を少し広げます。
20=人から学ぶです。
メンターや上司の伴走で、考え方や判断の幅を広げます。
10=研修や読書で学ぶです。
知識の底上げをして実務に戻します。
ストレッチ課題の3タイプを用意する
- 規模拡大型:担当範囲を広げる、メンバーからサブリーダーへ進むなど。
- 新規立ち上げ型:小さな新企画や改善プロジェクトをゼロから進めるなど。
- 逆境対応型:滞っている案件の立て直しや、クレームの構造的な再発防止など。
どの型も「期限」「期待成果」「意思決定範囲」を最初に決めると進めやすくなります。
会社の成果に近い仕事を1つ入れる
出世させたい部下には、売上やコスト、品質、満足度などの重要指標に近い仕事を必ず1つ入れます。
成果が周囲に伝わりやすく、評価の材料になりやすいからです。
任せ方のコツ:失敗しにくい設計と安全網
小さく始めて、段階的に広げる
最初から大きな案件を丸ごと渡すのではなく、スコープを小さく切って任せます。
小さな成功体験を積むことで自信がつき、スピードも上がります。
役割と意思決定ラインを明確にする
「どこまで自分で決めてよいか」「どこから上司に相談するか」をはっきりさせます。
迷いが減り、報連相の質が上がります。
チェックポイントは短く定期的に
1週間に1回など短時間の定点確認を入れます。
進捗、リスク、支援が必要な点を3点だけ確認すると続けやすいです。
目標設計:OKRとKPIを使い分ける
OKR=挑戦の方向づけ
OKRは「どこに向かうか」を示す挑戦的な目標です。
大きめのゴールを決め、進みながら学びを得ることを重視します。
KPI=毎日の運転計器
KPIは「今どのくらい進んでいるか」を測る指標です。
数値で見えるので、早めの手当てがしやすくなります。
OKRで方向、KPIで運用
出世させたい部下には「OKRで挑戦し」「KPIで日々を確認する」構えをセットにします。
伴走の基本:1on1とフィードバックの型
1on1は「目的・議題・記録」をそろえる
目的は「成果の最大化」と「成長の支援」です。
議題は「進捗」「課題」「次の一歩」に絞ります。
記録は簡潔に残し、次回の確認につなげます。
フィードバックはSBIで具体的に
Situation(状況)→Behavior(行動)→Impact(影響)の順で事実を伝えます。
良い点も改善点も、解釈や感情だけでなく「見えた事実」を言葉にします。
土台づくり:心理的安全性と学びの雰囲気
質問歓迎の合図を出す
「わからないことは早めに聞いて大丈夫」と明言します。
質問をとがめないことで、早い段階で問題が見つかります。
失敗の共有を責めずに行う
うまくいかなかった点は「次にどうするか」を中心に話します。
学びが増え、挑戦が止まりにくくなります。
見える化と後押し:メンターとスポンサーの活用
メンター=助言役
考え方や進め方を一緒に整理する人です。
定期的な壁打ちで意思決定の質が上がります。
スポンサー=推挙役
成果を周囲に伝え、次の機会につなぐ人です。
社内発表の場や社外の登壇機会を作ることも後押しになります。
配置と評価の運用:公正さと継続を担保する
評価は「事実」と「行動基準」で見る
印象ではなく、数値や行動例に基づいて評価します。
評価軸は事前に共有し、面談で根拠を示します。
定期レビューでキャリアを描く
タレントレビューやキャリア面談を定期的に行い、次の役割候補を一緒に考えます。
育成計画を文書化し、進捗を確認します。
よくあるつまずきと対策
忙しくて任せられない
仕事を粒度の小さいタスクに分け、最初の一歩だけを任せます。
成功したら次の一歩を渡す形で、段階的に任せる量を増やします。
失敗がこわい
小さな実験から始め、学びをまとめて次に活かします。
大きな本番の前に、練習の場をつくります。
評価が伝わらない
成果をスライドや社内掲示で見える化します。
上司以外にも関係者からのコメントを集めて共有します。
具体例テンプレート:出世させたい部下への90日プラン
0〜2週:設計
目標の合意、KPIの設定、役割と意思決定範囲の明確化、チェックポイントの設定を行います。
3〜8週:実行フェーズ前半
小さなスコープから開始し、毎週1on1で進捗と課題を確認します。
必要に応じて資源や人の支援を手配します。
9〜12週:実行フェーズ後半
スコープを広げ、成果の見える化を進めます。
中間成果を簡単に発表し、フィードバックをもらいます。
13週:振り返りと次の挑戦設定
学びをまとめ、次のストレッチ課題を一緒に決めます。
評価面談で根拠に基づいて話し、成長の実感を共有します。
まとめ
出世させたい部下には、今できる仕事とストレッチ課題を組み合わせて任せます。
上司は「目標と権限を明確にする」「短い定期確認を続ける」「必要な資源を用意する」を丁寧に行います。
心理的安全性、公正な評価、成果の見える化、メンターとスポンサーの後押しを合わせることで、成長と成果が結びつき、出世のチャンスが広がりやすくなります。
コメント