「職場でずっと咳がうるさい…」と感じても、個人を責めずに“ルールと環境”に沿って動けば、落ち着いて改善の糸口が見つかります。本記事では、環境の整え方(換気・席配置)、角が立たない伝え方のテンプレ、上司・人事・産業医への相談手順まで、やさしく実務的にまとめました。咳エチケットやマスクの考え方、換気の客観指標(CO₂濃度)など、公的情報を土台にわかりやすく解説します。
結論:対処は「環境 → 声かけ → 公式ルート」の三段構え
【すぐやるリスト】
- 会議はオンライン併用・短時間化、席の距離を広げる、静かな作業スペースを提案
- 換気の可視化(CO₂センサー等)で空気のこもりを把握し、窓開けや換気設備の適切運転を相談
- 「事実+自分の状態+お願い+代替案」で、やさしく伝える
- 難しい時は、上司・人事・産業医に段階的に相談する
公的に案内されている咳エチケット(マスク・ティッシュ・袖で口鼻を覆う等)やマスクは個人の判断が基本という考え方を共有しつつ、相手の意思を尊重して“職場のルールと環境改善”に話題を寄せるのが安全です。
“共通の土台”をそろえる:咳エチケットとマスクの考え方
まずは職場全体で共有できる基礎知識を整えましょう。咳やくしゃみの際は口と鼻を覆う、手洗いを併用といった「咳エチケット」を掲示や社内チャットで静かに共有すると、個人攻撃になりにくく、全員が守りやすいです。
また、マスクの着脱は個人の主体的な選択が基本です。お願いする際は「強制」ではなく「提案」として、会話距離や換気など代替策も一緒に示しましょう。
新型コロナは2023年5月8日から5類感染症に位置づけられ、外出等は基本的に個人判断となりました。職場内では、体調に応じて無理のない働き方(在宅・時差勤務など)を“環境面の工夫”として提案すると建設的です。
長引く咳の目安と受診のすすめ方(医療判断は医師へ)
咳は3週間未満=急性、3〜8週間=遷延性、8週間以上=慢性と分類されます。長引く咳には、感染症以外(例:咳喘息・逆流性食道炎・副鼻腔炎など)も関わることがあり、医学的評価は医療機関に相談しましょう。社内での言及は“受診の目安情報の共有”にとどめ、診断はしないのが安心です。
受診を勧めるときの言い方(例)
「最近、咳が続いていてご負担ではないかと心配しています。
医師の判断が安心だと思うので、必要に応じて受診できるよう業務面でもサポートしたいです。
しばらく会議はオンラインにするなど、私の方でも調整しますね。」
環境でできる配慮:換気・配置・会議運用
空気のこもりは、CO₂濃度で把握できます。室内環境の基準では、オフィス等の二酸化炭素濃度はおおむね1,000ppm以下が目安とされます。この目安を共有して換気量を検討すると、客観的に話し合えます。
換気の基本は、換気設備の適切な運転・点検、2方向の窓開け、サーキュレーターで空気の流れを作るなどです。窓が難しい空間ではCO₂濃度を確認し、人の密度調整や空気清浄機の活用(※空気清浄機はCO₂を下げません)といった選択肢も検討します。
また、快適性の観点で相対湿度40〜70%、温度18〜28℃を意識すると、乾燥で咳が出やすくなる季節にも配慮できます。
場面 | 今すぐできる対応 | 根拠・ポイント |
---|---|---|
オープンオフィス | 席の距離を広げる/発話の多い席を入口側へ/CO₂を定期チェック | CO₂1,000ppm以下を目安に換気量を調整 |
会議室 | オンライン併用・短時間化/入退室間に換気/サーキュレーターで空気の流れ | 入室人数と滞在時間を最適化し、空気の流れを確保 |
冬の乾燥 | 加湿器の適切運用、湿度計の設置 | 湿度40〜70%を目安に過度な乾燥を避ける |
角が立たない「伝え方」テンプレ(チャット/対面/メール)
言い方の基本は、事実(観察)+自分の状態(影響)+お願い+代替案。評価語や決めつけを避け、一緒に解決する姿勢を添えます。
チャット例
「午後から咳の音が増えているのに気づきました。私も音に敏感で集中が切れがちです。
可能なら、今日はマスクや席の距離を少し広げるなど、一緒に工夫できませんか。
もし難しければ、私が会議をオンライン参加に切り替えるなど、代替案でも大丈夫です。」
なお、マスクは個人の判断が基本です。強制や断定は避け、職場の方針・咳エチケット・換気など客観材料を共有しましょう。
上司・人事・産業医に相談するときの手順
- 記録する:日時・場所・状況・業務影響(「◯分ごとに咳の音で集中低下」など)。感情語は控えめ。
- 環境提案を添える:席替え・会議短縮・CO₂可視化など具体案を示す。
- 産業医/衛生委員会:環境改善(換気・配置)として議題化する。
ハラスメント防止は事業主の重要な責務です。注意喚起や相談が不利益取扱いにつながらないよう、正式な窓口や手順を確認しましょう。社外の総合労働相談コーナーでも、いじめ・嫌がらせ等を含む幅広い相談が可能です。困ったときは一人で抱え込まず相談しましょう。
在宅勤務や業務設計の工夫(業務を止めない観点)
- 一時的なリモート・時差勤務:音が気にならない時間帯に集中タスクを配置。
- 会議設計:アジェンダ必須、録画と議事録共有で滞在時間を最小化。
- 静かな作業室:短時間の“サイレントルーム”や電話ブースの活用。
体調面の配慮と業務継続を両立する選択肢として、柔軟な働き方を「環境施策」として提案すると、公平で前向きになりやすいです。
よくあるQ&A
- Q. 相手の体調に触れてもいい?
- A. 診断や病名は口にせず、音や集中への影響など事実ベースと、配慮のお願いに限定しましょう。
- Q. マスクをお願いできる?
- A. 個人の判断が基本です。職場の方針と咳エチケット、換気の工夫など複数の選択肢を併記して提案しましょう。
- Q. どこまでが個人の自由?
- A. 客観材料としてCO₂ 1,000ppm以下などの基準や換気の方法を共有すると、個人論ではなく環境の話として進められます。
参考にすると良い公的情報(リンクは社内共有用)
- 厚生労働省:咳エチケット(手洗い・マスク等の基本)
- 厚生労働省:マスクの着用について(考え方の整理)
- 厚生労働省:換気の方法と空気の流れの作り方
- 建築物環境衛生管理基準:CO₂濃度の目安(概ね1,000ppm以下)
- 事務所の温湿度の目安(相対湿度40〜70%、温度18〜28℃)
- 日本呼吸器学会:咳嗽の基礎情報(長引く咳の分類と受診の考え方)
- 厚生労働省:パワハラ防止関連の情報・総合労働相談コーナー
まとめ
「職場でずっと咳がうるさい時の対処法」は、ルール(咳エチケット・職場方針)、環境(換気・席配置・会議運用)、伝え方(お願い+代替案)、公式ルート(上司・人事・産業医・社外窓口)の順で進めるのが安全で建設的です。
強い表現や断定は避け、“一緒に解決する姿勢”を持てば、関係を傷つけずに働きやすさを取り戻しやすくなります。
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